接着系アンカーに関するFAQ

接着系アンカーに関して寄せられるご質問をまとめています。
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全般 | ダイヤモンドコア穿孔 | HIT-HY200-A/R | HIT-Zボルト | HIT-RE500V3 | HIT-HY270 |
HIT-ICE | HIT-1  | 高温母材 | 火災 | 引張試験

全般

ヒルティの接着系アンカーにはRoHS指令の 対象物質が含まれていますか。

ヒルティの接着系アンカーは「カドミウム及びその化合物」、「六価クロム化合物」、「水銀及びその化合物」、「鉛およびその化合物」、「ポリ臭化ビフェニール類」、「ポリ臭化ジフェニルエーテル類」、「フタル酸ジ-2-エチルヘキシル」、「フタル酸ブチルベンジル」、「フタル酸ジ-n-ブチル」、「フタル酸ジ磯ブチル」のRoHS指定物質を含んでいません。

ヒルティの接着系アンカーを使用した場合の 耐用年数はどれくらいですか。

ヒルティの接着系アンカーシステム HVU2, HIT-HY200-A/R, HIT-RE500 V3 などETA(欧州技術認証)取得製品は50年、HIT-HY200-A,HIT-RE500V3については100年の耐用年数を想定した基準(試験法と評価法)にて認証されています。

ETA認証とはなんですか。

EOTA(欧州技術認定機構)は一定の試験を行ったあと施工アンカーの認定を行っています。このEOTAによって認められた認証をETA認証(欧州技術認証)と呼びます。日本のJCAAは認証基準を満たしているかどうかのみを評価するのに対し、ETAは一定の基準を満たしたものに対し、更にアンカーの実力値に応じて設計式を規定しているため、欧米では実際の設計に活用されています。

接着系アンカーはJIS規格に該当しますか。

接着系アンカー、金属系アンカーともにJISには規定されていません。

JCAA認証製品はありますか。

HVU-G/EA2 アンカー(ガラス管)のみJCAAの認定を取得しています。このアンカーは耐震工事専用・限定販売なのでホームページには掲載しておりません。

防水層を貫通させて打設した場合、防水効果は有りますか。

防水層を貫通させて打設した場合、破壊された防水層とアンカーボルトの隙間を樹脂で完全に接合することができず、隙間から漏水する可能性が有りますので完全な防水効果があるとは言えません。

使用するアンカー筋の材質に制限はありますか。

全ねじ形状または異型鉄筋など凹凸のあるアンカー筋が使用可能です。アンカー筋の材質はセラミック、チタン、炭素鋼、ステンレスなど様々な材質に対応可能です。カタログ記載以外のアンカー筋については現場試験等で強度を確認の上、許容安全荷重を設定してご使用ください。

アンカー筋に溶接は可能ですか。

JCAA指針では溶接熱はアンカー筋からコンクリートへと急激に拡散するので影響は少ないとなっています。孔口付近への溶接は樹脂が高温になり樹脂分子のかい離や炭化がおこるリスクがありますので事前に監理者の指示を受けてください。

穿孔径が施工仕様よりも大きい場合、なにか問題がありますか。

穿孔径が仕様より大きいと樹脂が不足したり、既存の試験データが適用できなくなりますので、ヒルティの施工仕様を順守してください。
また、土木工事などでアンカー筋呼び径+10mmでHIT-RE500V3を使用して施工する場合は、引張試験等で性能確認をした上でのご使用をお勧めします。

途中まで使用したHIT樹脂フォイルパックの保管方法は。

使用後はノズルは外さず装着したままで保管してください。
次回使用する際には新しいノズルに交換して使用してください。新しいノズルの使い始めには所定量の樹脂を廃却してください。
一旦開封したフォイルパックは4週間以内に使用しそれ以上経過する場合は廃却してください。

ダイヤモンドコア穿孔

ダイヤモンドコアで穿孔した孔に接着系アン カーは使用できますか。

気中施工の場合、ダイヤモンドコアで穿孔したのち、専用の「メアラシツール」等で孔壁を目荒し後、スチールブラシ+ダスト除去の手順を行えば、どの樹脂でも使用できます

スチールブラシによる清掃は目荒らしとなり ますか。

スチールブラシは清掃作業の位置づけでメアラシ作業ではありません。あくまでコンクリート孔壁に付着したコンクリート切削粉やコンクリートノロを除去する目的です。スチールブラシによる清掃後、コンクリート孔壁を指でなぞると細骨材の砂の粒度が感じられるようになります。

ダイヤモンドコア穿孔+スチールブラシ清掃のみで使用できるアンカーはどれですか?

HVU2カプセル、HVU-G/EA2ガラス管カプセル、HIT-Zボルト+HIT-HY 200-A/Rの組み合わせはダイヤモンドコア穿孔した孔+スチールブラシ清掃したに直接使用可能です。これらの場合、耐力低減は見込みません。
気中施工の場合、HIT-RE500 V3 は「ダイヤモンドコア穿孔+スチールブラシ清掃」の下孔に使用可能ですが、耐力低減を見込む必要があります。

冠水状態や水中施工で使用できるアンカーはどれですか?

冠水施工の場合、HIT-RE500V3を使用して「ハンマードリル穿孔+スチールブラシ清掃」または「ダイヤモンドコア穿孔+メアラシツール+スチールブラシ清掃」で使用可能です。
水中施工や海中施工の場合は「削岩機穿孔+スチールブラシ清掃」での下穴に、HIT-RE500V3樹脂で施工が可能です。

水中施工の状況で、ダイヤモンドコアで穿孔した孔に施工できますか。

水中施工の場合、ダイヤモンドコアで施工した下穴にワイヤブラシで清掃したとしても使用できません。メアラシツールによるコンクリート孔壁の「メアラシ」が必要です。

HIT-HY 200-A/R

穿孔した孔が濡れている状況でHIT-HY 200-A/Rアンカーの施工は可能ですか。

穿孔した孔に泥水やノロ水がある場合はきれいな水で洗浄した後、高圧エア等で水滴を吹き飛ばしてください。水分でコンクリートの色が変わっている状態(コンクリートに水分を含んでいる湿潤状態)であれば施工は可能ですが、コンクリート表面に水が浮いた状態や水滴状の水が有る状態では施工できません。

雨が降っている状況でHIT-HY200-A/R樹脂は使用できますか。

テントや覆いを掛けるなどして、打設時と樹脂の硬化養生期間中に雨水にあたらないように養生すれば使用可能です。

HIT-HY200-A/R樹脂は水中で使用できますか。

HIT-HY200-A/R樹脂は水中では使用できません。HIT-RE500V3樹脂を使用してください。

HIT-Zボルト

従来の全ねじボルトを使用した場合との違いはなんですか。

普通の全ねじボルトの固着原理は樹脂のコンクリート壁面への付着力と樹脂のひっかかりによる抵抗です。Zボルトはらせん形状によりコンクリート壁面へ大きな支圧力を発生させることによって高耐力を実現しています。また、ボルトには特殊コーティングが施されており、ボルトと樹脂は付着せずクサビ効果を高める働きをしています。

各サイズの最少埋め込み深さと、その場合の許容安全荷重を教えてください。

最少埋込み深さは、M8 60mm、 M10 60mm、 M12 60mm、 M16 96mm、 M20 100mmです。
その場合の許容安全荷重(Fc=21N/mm2)は、M8-10.8kN 、 M10-12.1kN、 M12-12.1kN、 M16-24.6kN、 M20-26.1kNになります。

M8で60mm、M10で60mm、M12で60mm、M16で96mm、M20で100mmと国内で一般的な埋め込み深さ基準の7d以下で高耐力が得られるのはなぜですか。

HIT-Zボルトは、らせんの外周の長さ分ほど金属拡張アンカーの固着機能を持ったアンカーと同じ固着力を発揮しています。このため、孔底からコンクリート表面まで万遍なくコンクリート壁面へ大きな支圧力を発生させることによって浅打ち施工でも高耐力を発揮しています。

耐震認証 ETA-C1/C2とはなんですか。

ETA-C1は0.5mm幅のクラック上にアンカーを打設し常時一定の引張荷重を掛けた状態で振動試験を行ったもので、ETA-C2はクラック幅を 0-0.8mmまで変動させて常時荷重の振動試験を行い、この評価を含めて許容安全荷重に反映された認定です。

HIT-RE 500 V3

HIT-RE500V3で水中施工は可能ですか?

HIT-RE500V3で水中施工の場合、ハンマードリルや削岩機で穿孔した下穴で施工を行ってください。ダイヤモンドコアドリルで穿孔した下穴では使用できません。

HIT-RE500V3樹脂で水中施工の際の注意点はどんなことですか。

穿孔穴を十分に清掃後、プロフィシステム(必須)を使用して孔底から樹脂に若干の圧力をかけて樹脂を孔壁に押し付けるようにしながら孔内全部に樹脂を充填してください。この作業によって、孔内の水をすべてRE500V3樹脂に置換します。水中施工の場合は気中施工のように必要樹脂量のみの充填ではありません。
その後、アンカー筋をゆっくり挿入してクサビ等での固定養生や別途樹脂の流出防止養生を行ってください。
孔口からあふれたHIT-RE500V3樹脂は硬化後に除去してください。
また硬化時間は陸上施工時の2倍以上の時間を養生してください。

河川の護岸工事等で水流がある状況でHIT-RE500V3樹脂は打設できますか。

水流がある場所にHIT-RE500V3樹脂を打設すると、未硬化の樹脂が流出し樹脂が不足します。また、樹脂の硬化養生期間中に水流の影響でアンカーボルトが振動し、ボルトと樹脂の間に隙間ができて耐力が発現できなくなりますので、水流のある場所でのアンカー打設はお勧めできません。

穿孔穴に湧水がある場合は施工可能ですか。

穿孔穴に湧水がある場合は施工できません。湧水を止めてからアンカー施工を行ってください。

エア式ディスペンサーP 8000 Dとエアホースを接続するには何が必要ですか。

市販のR1/4の管用テーパーネジのオスカプラをP 8000 Dホース先端に取り付けてご使用ください。

今までのHIT-RE500樹脂と硬化時間の違いはありますか。

HIT-RE500樹脂と比較して約半分の硬化時間となりました。10℃で16時間、20℃約7時間で完全硬化となります。

HIT-HY270

HIT-HY70との違いは何ですか。

HIT-HY270はHIT-HY70の後継品です。樹脂の成分や使用方法はHIT-HY70と同じです

HIT-HY270を使用してALCにボルトを使用したいのですが、可能ですか。

ALC母材への適用については、現場の実物での引張試験で耐力を検証・確認した上で使用可否を判断してください。

通常のコンクリート母材にHIT-HY270は使用可能ですか。

HIT-HY270はALC母材やシーブを使用した中空母材に適用します。ヨーロッパではソリッドレンガや軽量コンクリートでの耐力データが有り使用可能ですが、日本国内ではこれらのデータが有りませんので、引張試験等で性能確認をした上でのご使用をお勧めします。

HIT-HY270は自然石に使用できますか。

HIT-HY270は大谷石(溶結凝灰岩)、みかげ石(花崗岩)などの自然石に使用可能です。ただし、日本国内の自然石での各種試験データが有りませんので、引張試験等で性能確認の上ご使用ください。

HIT-ICE

HIT-ICEのディスペンサーはどれを使用すればよいですか。

HIT-ICEの場合、カートリッジの後端形状が特殊ですので、市販のディスペンサーは使用できません。
品番:371291、 品名:マニュアルディスペンサーMD1000 を用意していますので、こちらを使用してください。

マイナス40度の冷凍倉庫内で使用したいのですが、可能ですか。

HIT-ICEのカートリッジから吐出させて施工が可能な温度範囲は-23℃~32℃ですので、アンカーボルト打設付近に囲いや覆いをするなどして、-23℃より温度を上げる必要が有ります。HIT-ICEカートリッジ、アンカーボルト材を保温するとともにハロゲンランプ等を利用してアンカー打設位置のコンクリートをスポット的に温めます。硬化後は -40℃~+70℃ までが使用可能温度範囲となります。
また、アンカー打設時の温度が -10℃~40℃の場合、HIT-HY200A/Rを使用することも可能です。HIT-HY200A/Rの硬化後の使用温度範囲は -40℃~+120℃になります。

HIT-1

HIT-1は一液性樹脂ですか。市販のコーキングガンで施工できますか。

HIT-1はメタクリル樹脂を成分とした二液性の注入用アンカー樹脂です。必ず専用のミキサーノズルを装着してノズル内で混合・かく拌を行ってください。また本体は300mlの円筒形ですのでサイズが合えば市販のコーキングガンでも使用可能です。

中空母材やALC、自然石に使用可能ですか。

HIT-1の適用母材は普通コンクリートと中空母材のみで、ALCや自然石には適用しません。

HIT-1のアンカー筋の適用範囲を教えてください。

M8, M10, M12, M16の全ネジボルトが適用範囲です。M20以上の全ネジボルト及び異形鉄筋でのご使用は推奨しておりません。

HIT-1は上向き施工が可能ですか。

はい、可能です。上向き施工の場合はプロフィ注入システムをご使用ください。

高温母材

母材コンクリートが周辺設備機器の影響で高温になる場合、ヒルティの接着系アンカーは何度まで使用可能ですか。

ヒルティでは接着系アンカーの硬化後の使用温度範囲を「温度範囲 Ⅰ」、「温度範囲 Ⅱ」、「温度範囲 Ⅲ」と三段階で許容安全荷重を設定しています。
たとえば、HIT-HY200-A/R樹脂では下記のようになります。

温度範囲 Ⅰ:母材温度範囲 -40℃ ~  +40℃、長期温度 +24℃、短期温度 +40℃
温度範囲 Ⅱ:母材温度範囲 -40℃ ~  +80℃、長期温度 +50℃、短期温度 +80℃
温度範囲 Ⅲ:母材温度範囲 -40℃ ~ +120℃、長期温度 +72℃、短期温度 +120℃

ですので、HIT-HY200-A/R樹脂の場合は、長期温度 +72℃、短期温度(24h程度) +120℃まで使用可能です。
この使用温度範囲は樹脂により異なりますので詳細は弊社エンジニアにお問い合わせください。

火災

ヒルティの接着系アンカーが火災を受けたときの引張耐力データはありますか。

ヒルティの接着系樹脂 HVU2, HIT-HY200A/R, HIT-RE500V3はISO標準加熱曲線に沿った火炎実験を行っています。試験データはR30(着火から30分後、約842℃)、R60(同60分後、約945℃)、R90(同90分後、約1000℃)、R120(同120分後、約1049℃)での4段階での基準強度データがあります。

接着系カプセル方式アンカー HVU2 M16x125 が火災を受けたときの残存耐力はどれくらいですか。

HVU2 M16x125 カプセルとHAS-U 5.8 M16ボルトの組み合わせで、R30=7.85、R60=5.55、R90=2.98、R120=1.66(kN)です。他のサイズ、他のアンカーについては弊社エンジニアまでお問い合わせください。

アンカーボルト材をステンレス鋼にした場合、火災後の基準強度はどうなりますか。

HVU2 M16x125 カプセルとステンレス製ボルトHAS-U A4 M16の組み合わせでは、R30=12.8、R60=5.55、R90=2.98、R120=1.66(kN)となり、炭素鋼のアンカーボルトに比べて火災初期での残存耐力は大きくなります。

火災を受けることが想定される接着系アンカーの残存耐力を確保する方法はありますか。

アンカーボルトの材質が炭素鋼よりステンレス鋼の方が熱伝導率が低く、火災発生初期にはアンカー樹脂に伝導される熱の割合が少ないと考えられます。また、M10よりはM12、M12よりはM16とボルトサイズが大きくなれば残存耐力は大きくなるという試験結果があります。火災を受ける可能性が有り、火災後の残存耐力を確保する目的では、アンカーサイズを上げてステンレスボルト材を使用することが選択肢の一つとして挙げられます。

引張試験

現場で引張試験を行う際の検査荷重はいくらで設定すればよいですか。

引張試験には最大荷重を測定する破壊試験と検査荷重を載荷してアンカーの固着を確認する非破壊試験の2種類が有ります。技術者や設計者による指示値または設計図書や仕様書などで指示されている基準または数値に従って検査荷重を設定してください。

現場でせん断試験はできますか。

現場でせん断試験を行うのは一般的ではありませんが、状況により可能な場合と不可能な場合があります。
引張試験とは異なり広いスペースが必要とするのと、せん断試験専用の治具を準備する必要があります。また、実施する場合には事前の現地確認と試験方法や判断基準を明確にする必要があります。