私たちの使命は安全を守る事

山陽新幹線 逸脱防止ガード

山陽新幹線 逸脱防止ガード

大鉄工業株式会社

日本は世界でも有数の地震国

日本は全世界の国土面積の1%にも満たない、とても小さな国である。

ところが、2000年から2009年の9年間の統計によると、地球全土で発生したマグニチュード6.0以上の地震のうち、なんと約20%強が日本とその周辺で発生している。日本は世界でも有数の地震国である。当然のごとく被災規模も大きい。津波災害や建物の倒壊などの被災はもとより、ライフラインや交通インフラへの影響もけっして小さくはなく、甚大な被害に繋がるようなケースも多数見受けられる。

近年では北海道南西沖地震、兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)、新潟県中越地震、新 潟県中越沖地震、岩手・宮城内陸地震など人的被害規模の大きな地震が発生している。そして2011 年3月、マグニチュード9.0、最大震度7.0、死者・行方不明者約1万8,500人という戦後最悪 の震災といわれた東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生している。これらの震災から学んだ教訓を生かして、建造物や防潮堤などの震災対策はもちろんのこと、鉄道に代表される交通インフラにおいても現在急ピッチで減災対策工事が進んでいる。

その最前線の現場を今回取材した。

減災対策工事に取り組む鉄道工事のスペシャリスト

「事故を起こさない仕事をきっちりやる会社にしよう!」 鉄道の安全を守る仕事の本質をシンプルに表現し、かつ会社の目指す方向性を明確に表した力強いスローガンだ。 鉄道工事事業を担い、2013年3月に創立70周年を迎えた鉄道工事のスペシャリスト集団である。

今回の取材先である敷設工事現場は、まさに日本の大動脈の一角を担う関西の重要拠点だ。 鉄道インフラに関連する地震発生時の減災対策は、2004年10月に発生した新潟県中越地震を機に急ピッチで進められている。高速で走行する新幹線車両がレールから逸脱するような大きな事故を防ぐ、優先順位の最も高い工事のひとつだ。

敷設工事区間は山陽新幹線、新大阪から姫路までの上下線約114km。その区間を、終電以降深夜0時過ぎから午前4時までの限られた時間内に逸脱防止ガードを敷設する作業は、制約も多く、鉄道工事の中でも厳しい条件の工事と言われている。また、西日本管内では前例のない初めての工事であったことから、工事を進捗させながら施工方法を検討しなくてはならないという状況に、さらに工事が遅れる厳しい現実が待っていた。

  • 大鉄工業株式会社 神戸支店 主任 小野雅之氏(中央)、日本ヒルティ株式会社 鉄道ビジネスユニット 吉田(左)、技術本部 小隈(右)

 

 

早期完成が求められる減災対策工事では、作業効率の向上が必須

今回のプロジェクトの効率化推進に取り組んだメンバーの一人、神戸支店 主任の小野雅之氏が当時の状況を語ってくれた。

「通常行っている主要な工事や、保守・点検作業と並行して施工を行なわなくてはならず、作業調整と綿密な工程管理と併せて、作業効率の大幅な向上が求められた厳しい工事でした。」 と苦労の連続だった日々を振り返る。

「工程管理の観点で言えば…①試験敷設の結果から各工程の見積もりと問題点の把握、②所要人工数・所要日数の算出、保守作業計画との調整、③工事推進委員会(月1回)による工事進捗のトレース、④懸案事項の整理、作業標準の作成や工程の見直し、といった工程を経て、初期段階から穿孔機の増備の検討、他エリアから助勤を要請する必要性など、課題が見えてきました。」

しかし、工事開始半年後に実績減(対計画)という現実に直面する。小野氏は頭を抱えた。 その原因は、工事着手(契約)の遅れ、計画以降に発生した追加作業、天候不良・機器の故障による作業の中断などがあった。この段階で、穿孔機の増備や他エリアからの助勤では不十分であるとの見解に至った。

必要なのは優れた工具や部材ではなく、共に問題解決に取り組んでくれるパートナー

施工フローは、① 現地調査、② PCまくらぎ穿孔・スラブ穿孔、③ インサート設置、④ 固定受台取付、⑤ ガード敷設(ガード運搬車)、と工種は少なく単純ではあるものの、施工延長が114kmと非常に長い。そこで、それぞれの工程ごとに作業方法や施工方法の見直しを再検討することになった。


「我が社には会社の方針として、効率化につながる機械化やそれにつながる事に関してはとても積極的に取り組める企業風土があります。ですから、新しい工法や機器の導入に関しても推進しやすい環境が整っているように思います。」と小野氏が誇らしげに語る。

工程ごとに施工方法を見直し、改善案を作成した。 後に詳しく紹介するが、①から⑤の各工程において改善による効果が見られたが、中でもと りわけコスト削減や工期の短縮といった大きな成果を達成したのが、②PCまくらぎ穿孔・ スラブ穿孔と③インサート設置であった。

PCまくらぎ穿孔・スラブ穿孔では、穿孔機の改良、防音対策、穿孔穴の清掃方法の改善といった改善案が打ち出された。写真にあるように、まくらぎに3穴を同時に正確に穿孔させるために<PCまくらぎ穿孔機>という機器を導入し、工事にあたっていた。この機器は3台の ハンマードリルを平行にフレームで固定し、一人の作業員で3穴を同時に正確に穿孔できる画期的な機器として、工期の短縮を期待して導入されたものであった。 試験工事の際はヒルティ製以外のドリルが装着されていた。連夜、休み無しで稼動さ せなくてはならない過酷な状況に、ドリルは悲鳴をあげてしまった。故障が原因で作業の中断に追い込まれるような状況が度々発生した。

こうした工期の遅れに直結する問題解決に向けて、新しいパートナーに選ばれたのがヒル ティであった。鉄道工事現場では、連続稼動を強いられる。ドリルにとって非常に厳しい 環境に耐えられる高い耐久性が求められる事はもちろんのこと、万一の故障に備え、代替え機の提供など万全のサポート体制が必須と考えられた。

 

ヒルティが提案した製品はコンビハンマードリル TE 60-ATC。

2011年6月に実施されたハンマードリルとドリルビットのセットを使用した穿孔性能比較試験で、ドリル本体の高い品質と耐久性能はもちろんのこと、ドリルビットの製品寿命が想像以上に長い点が評価され、採用に至った。

比較試験は実際のまくらぎを使用して穿孔本数を30本同一条件で行い、穿孔時間を記録するとともに、穿孔状態の確認を行った。結果は他社製ハンマードリルの平均穿孔タイムが151秒に対し、ヒルティ製が128秒と圧倒し、穿孔性能で14%改善できることを実証した。

また、テスト終了後のドリル本体の状況では、他社製のギヤー部よりわずかにオイル漏れがみられたが、ヒルティ コンビハンマードリルTE 60-ATCでは一切オイル漏れ現象はみられなかっ た。「完璧な状態でした。」 小野氏は親指を上に向け、微笑んだ。

さらに、故障した場合に迅速に代替え機の提供が可能なサービスが付帯されている「フリートマネジメント」の提案で、同社が懸念していた故障に伴う工事進捗の遅れに対する不安を解消、し問題解決を図った。

「ハンマードリルは神戸で8台、姫路で8台、計16台を導入しました。PCまくらぎ穿孔機4台に実装する分が計12台、神戸・姫路各2台ずつ計4台が予備機です。まくらぎ穿孔工事期間中、実はヒルティ製品でさえも数回故障する事態が起きました。見方を変えれば、それほど過酷な現場であったということです。買取りと<フリートマネジメント>を併用して導入した背景には、以前の苦い経験がありましたから、故障の際の代替え機を速やかに提供してもらえる安心感は、工期をマネジメントする上で本当に大きかったですね。できれば、工事期間の3年に合わせて契約期間も選べたら、尚ありがたいですが・・・。」

逸脱防止ガード

PCまくらぎ穿孔・スラブ穿孔

5倍の材料費でもヒルティのアンカーを採用!58%、59%、62%が示す事

インサートの設置作業においては、使用する樹脂の再検討と、冬季における樹脂の硬化不良防止対策が挙げられた。従来インサートの埋め込み作業に使用していたポリモルタルは、 材料費は比較的安価である反面、現場で粉末と樹脂の2種を撹拌して使用する為、手間がかかる。また、穿孔穴に手作業で充填するため、充填品質にバラツキが出やすく、やり直し作業も少なくなかった。その結果、工期の遅れの原因にもなっていた。

現場注入工法のアンカー施工プロセスは、①現場で樹脂の調合、②穿孔、③下穴掃除、④プライマー塗装、⑤樹脂充填・アンカー筋挿入、⑥硬化養生、⑦後片付け…という流れである。

そこでヒルティが提案したのが接着系注入方式アンカー HIT HY-150MAXを使った工法。
この工法のプロセスは、① 穿孔、② 下穴掃除、③ 樹脂充填・アンカー筋挿入、④ 硬化養生…となる。

現場注入工法に比べると、樹脂混合作業やプライマー塗装、後片付けの3工程がなくなり、 かつ樹脂の充填は専用ディスペンサーで作業できるという利点がある。 この工法では樹脂を充填する量を調整しやすく、また攪拌の必要がないため、配合ミスによるロスや樹脂の硬化不良も防ぐことができる。

「唯一ネックだったのは材料単価が高いことでした。材料費はポリモルタルに比べると約5倍です。にもかかわらずHIT HY-150MAXを迷わず採用しました。

採用経緯について解説します。 施工手順を簡素化することで作業時間の短縮を狙いました。また使用する機材が少ないこと、作業現場における置き忘れ防止にも有利に働きます。作業効率が格段に向上し生産性が上がったことで、人件費も含めたコスト管理においては10日間の試行の結果、従来品との比較で143%、目標であった30%以上の効率向上が達成されました。こうした結果を踏まえて本採用を決定しました。

人件費や工期までを含めたトータルコストで検討し、最良の成果を求めたからです。もちろん性能評価試験による引き抜き強度も難なく基準をクリアしていました。」

材料費は従来品と比べ跳ね上がったものの、人員においては62%削減、工期(日数)においては59%削減といった非常に大きな成果の達成に貢献したことにな る。同じく、先のまくら ぎ穿孔においては、人員・工期(日数)ともに58%削減に成功している。同社が取り組んだ施工方法における改善策の中でも、ヒルティが直接サポートした工程に於いて目を見張る大きな成果がみられた。

注入式アンカー施工作業

大鉄工業株式会社 神戸支店 主任 小野雅之氏

提案型ソリューション提供で顧客のビジネスに貢献

日本の鉄道技術は、品質・安全性において世界最高水準といえる。 今回の現場は、減災対策という観点から早急な対応と高い安全性が同時に求められる状況にあった。また前例のない工事のため、試行錯誤を繰り返し、多くの知恵と果敢なチャレンジを積み重ねた結果、短期間に高い生産性を実現しトータルコストの削減を達成できた。その背景には、想像をはるかに超える大きなプレッシャーと戦いながら結果を出した、鉄道工事のスペシャリストたちの誇りが見て取れた。

一方、お客様が抱える課題に対し、共に取り組み解決策を導き出し、予想以上の成果に貢献できたことは、ヒルティにとって大きな自信につながったプロジェクトとなった。 両社が長年培ってきたノウハウを互いに持ち寄り、それぞれが高いプロ意識で挑み、そして結果を残せたことで、強固なパートナーシップの醸成を確かなものにしたと言えよう。この事業に対する取り組みは、工事発注者からも高く評価され、広島管内に引き継がれる予定である。

インタビューの最後に、「会社の方針・取り組みとして生産性の向上に貢献する事は積極的に行っています。今後も是非ヒルティに相談していきたい。」
小野氏はそう締めくくってくれた。




【企業データ】
会社名:大鉄工業株式会社 http://www.daitetsu.co.jp/
設立:1943年(昭和18年)3月18日
資本金:12億3,200万円
従業員数:1,238人(2014年3月31日現在)

事業内容:

  • 建設工事及び軌道工事の請負並びに測量、設計及び監督の請負
  • 砕石の採取及び販売
  • 各種工事材料の供給及び運搬
  • 工事用機械・器具の賃貸借
  • 不動産の売買、貸借及び仲介並びに管理
  • 前各号に附帯関連する事業

導入製品:
ハンマードリル TE 60-ATC 16台(神戸・姫路各8台)、ドリルビット TE-YX 35/57 1,330本、バキュームクリーナーVC 40、 接着系注入方式アンカー  HIT-HY 150MAX 500/2 10,900本、ダイヤモンドコアツール DD 350、 ダイヤモンドコアビット DD-BL 72/250 P2 125本
 

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