最先端の耐震研究・実験に全面協力

「耐震」のヒルティ

スマートブレース工法

耐震補強研究への貢献はもちろん、既存顧客へのフィードバックも視野に

日本ヒルティ株式会社は、建設土木業界をはじめ、鉄道、耐震などの分野をターゲットにビジネスを展開しているが、一方で大学(大学院・専門学校・職業訓練校も含む)や国公立の研究機関などが行っている研究活動や技術開発・実験にも積極的に参画し、さまざまな研究支援活動を行ってきた。中でも『耐震補強』にかかわる研究や実験には、日本のみならず世界各国で積極的に取り組んでいる。

九州大学大学院 都市・建築部門 建築構造学講座 准教授・中原浩之氏が中心となって行っている耐震補強研究への協力活動もそのひとつ。中原氏は『圧縮抵抗型CFTブレース補強工法 スマートブレース工法』(以下、スマートブレース工法)の考案チームの中心メンバーで、同工法の推進・普及を目的としたCFT-SS補強工法開発推進研究会の会長も務める。

今回、九州大学大学院内にある研究室を訪ね、商用化に向けて本格的に動き出した同工法の特徴や優位性、また普及を推進する背景やその市場性、ヒルティへの今後の期待などについて話を伺った。

中原氏とヒルティとの出会いは、2007年に中原氏が行った耐震補強実験。
ヒルティ西日本プロジェクト開発課 フィールドエンジニアの有田と中原氏を結びつけたのは、当時有田が営業していたある設計事務所の担当者だった。人の縁を感じると前置きしながら、中原氏が当時を振り返る。

「2007年の耐震補強実験の際、わずか数本のアンカーを打設するのに、わざわざ業者に依頼するほどの作業でもなかったので、ボランティアで協力してくれる人を探していたところ、ヒルティの有田さんが快く引き受けてくれました。それがお付き合いのはじまりで、今日の協力関係に至ります。」

この実験をきっかけに交流がスタートし、建て替えが決まっていた九州大学の校舎を使って実施した2010年の耐震補強実験では、数100本のアンカー製品の提供をヒルティが担当するなど本格的な実験協力を行っている。以後、中原氏の耐震補強に関する研究活動に関する実験時の作業協力はもちろん、あと施工アンカーに関する技術的なアドバイスや情報提供など、研究支援活動は多岐に渡っている。

このあたりについてヒルティの担当である有田は、
「民間企業向けの技術支援やサポート業務と異なり、大学や研究機関向けの活動は、即自社の売上に貢献するような活動ではありません。しかしながら、最先端の研究に直接関わることで、ヒルティの強みのひとつでもある耐震ソリューションに関連した技術的ノウハウの向上や、既存顧客へのフィードバックに生かせるデータに裏づけされた現場経験を積むことができます。これはヒルティにとっても、またエンジニアである私自身にとっても非常に大切な活動だと思っています。」と語っている。

低コスト・短工期を可能にする画期的な耐震補強工法の普及に向けて

ここで中原氏を中心とした研究チームが考案し、論文にも発表された耐震補強メソッド『スマートブレース工法』の概要について、中原氏の論文を引用しながら簡単に紹介する。

『スマートブレース工法』はブレースに圧縮力のみを負担させ、この力を支圧によって既存躯体に応力を伝達させる。通常の補強ブレースは引張力も負担し、これを鉄骨枠を通じて水平及び鉛直方向のせん断力として既存躯体に伝達させている。本補強法は、引張力の負担を放棄することで、鉄骨枠を不要とし、合わせてスタッド・アンカーを最小限に留めることが可能となるため、材料費と工期の大幅削減が期待できる。

また、垂壁、腰壁、袖壁などの除去の手間も省くことが可能で、工程中の騒音、振動を低減しつつ居ながら施工を実現できると考えられる。(中原浩之氏著「実在文教施設の加力実験に基づく低コスト耐震補強法の開発」より引用 http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/h24giken/program/kadai/pdf/ippan/ippan3-06.pdf )』

「これまでの補強理論は、補強した側を壊すというものでしたが、【補強された側を壊す】という発想の転換から生まれた工法が『スマートブレース工法』です。」
そう中原氏が解説する。

従来の工法と比較すると、鋼材量を大幅に低減できることから低コストで実現できる上、工期も大幅に短縮できる点が大きな特徴。地震大国といわれる日本国内はもとより、地震が多発する海外の発展途上国などで耐震補強工事を推進する際、今後大きな期待が寄せられている画期的な工法だ。

先の九州大学・六本松校舎を使った耐震補強実験を見ていた中原氏の先輩にあたる、鹿島建設株式会社の責任者が『スマートブレース工法』に注目。翌2011年に着工した中村学園大学(福岡市城南区)の耐震補強工事に導入された。新工法が実際の現場で早速採用される異例のケースとなった。(一般社団法人 日本建設業連合会HPより引用http://www.nikkenren.com/kenchiku/qp/pdf/9/009.pdf )

2014年9月、『スマートブレース工法』は一般財団法人 日本建築総合試験所にて『建築技術性能証明書』を取得している。その際の実験データの収集に不可欠であったさまざまな実験サポートを通じて、ヒルティの研究支援活動が証明書取得に貢献したという見方もできる。

スマートブレース工法

九州大学大学院 人間環境学研究院 都市・建築部門 建築構造学講座 准教授 兼 CFT-SS補強工法開発推進研究会会長 中原浩之氏

EU市場における普及促進に向け、ヒルティの協力支援に期待

2012年に文部科学省主催の国際会議で、EUと日本の大学のジョイント研究などに助成金を支給するプロジェクトがあった。対象となるテーマは『耐震』と『環境』の2つ。中原氏は、この国際会議で知り合ったルーマニア出身の研究者と意気投合し、その後EU市場における耐震補強の実態調査・視察を共同で行うこととなる。

EUの中でもルーマニアは日本同様に地震が多発する国で知られている。アフリカ大陸とユーラシア大陸が衝突する位置にあり、100年に2~3回の確率で大地震が発生している。近年では1977年3月4日、マグニチュード7.2の大地震がルーマニア東南部で発生し、多数の死傷者が出て、首都ブカレストでもビル倒壊など大きな被害をもたらした。

ルーマニアには2002年~2007年にかけてJICA(国際協力機構)が入り、地震災害軽減計画プロジェクトが展開されたが、残念ながら耐震補強工事に関しては思うように進んでいない。

その要因のひとつが、当時主流であった耐震補強工法はコスト面でも、また必要とした施工技術レベルも、ルーマニアの国内事情にマッチしていなかった点があげられる。日本の職人にように緻密には施工できないという現実がそこにはある。

ルーマニアをはじめEU数カ国で実態調査・視察した中原氏は、
「現地で耐震工事をしていた事例で、たった2例しかありませんでした。国内市場以上にEU市場でこそ『スマートブレース工法』は必要とされ、普及するのではないか・・・。」
そんな可能性を強く感じたという。

「EU市場で『スマートブレース工法』を普及させるためには、耐震ビジネスにおける実績も豊富な上、EUに本社(リヒテンシュタン公国)を置くヒルティさんのバックアップに是非とも期待したいですね。」
親しみを込めた笑顔で有田を見つめながら、今後のさらなる協力関係を深めたいと語った。

耐震補強研究の頼もしいパートナー、今後も協力し合って成果をあげたい

『スマートブレース工法』の普及に向けては、国内市場では2014年に設立されたCFT-SS補強工法開発推進研究会が中心になって推進をはかっていくそうで、インドネシアでは新築物件にビルドインする動きもあるという。またEUをはじめ世界に目を向ければ、グローバル・ネットワークを有するヒルティへの期待も大きいと感じた。

九州大学をはじめ西日本エリアを飛び回っている有田は、
「大学や研究機関への技術支援や実験協力は、人的交流も含めたパイプ構築の意味合いも大いにあります。今回の中原先生の研究支援活動は、『耐震工事に強いヒルティ』と期待を寄せてくださるお客様にも、さまざまなカタチでシェアさせていただける収穫がたくさんありました。画期的な新工法や優れた施工性を有する耐震補強対策が普及することで、地震災害の低減が実現できるなら日々の活動の励みにもなります。」
そう語る有田の表情からは、中原氏をはじめ多くの研究者から信頼されているエンジニアの誇りが見て取れた。

中原氏はインタビューの最後に、
「耐震対策は個別にやるよりも、地域やエリア全体で施工しないとその効果を発揮できず都市防災にはつながらない。これがとても重要なことだと私は考えております。『スマートブレース工法』は、アンカーの施工本数は極端に少なくなり、材料費の大幅カットを可能にします。コスト、工期、で大きなアドバンテージを実現する耐震補強のための新工法です。これからもご協力をよろしくお願いします。」そう締め括った。



【取材先データ】
取材先:九州大学大学院 人間環境学研究院 都市・建築部門 建築構造学講座
准教授 兼 CFT-SS補強工法開発推進研究会会長 中原浩之氏

●    中原浩之氏|九州大学 研究者情報
http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K002801/research.html

●    九州大学六本松キャンパスにおける実在建物の耐震実験報告
http://www.hues.kyushu-u.ac.jp/100aniv/arch/index.htm

●    圧縮抵抗型CFTブレース補強工法 スマートブレース工法(日立機材HPより)
http://www.hitachi-kizai.co.jp/products/kz/smartbrace/

●    スマートブレース工法カタログ(日立機材HPより)
http://www.hitachi-kizai.co.jp/products/download/catalog/kz/pdf/smartbrace_01.pdf

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