特別対談 菅原進一氏 x 藤岡 健介

国土交通省 防火設備 区画貫通部 大臣認定取得

安心・安全と施工の合理性を追求した防火措置工法

安全を守る防火区画とは

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藤岡 本日は火災科学研究の第一人者である菅原進一先生にお時間をいただき、建築物の防火安全措置における耐火・防火区画の重要性、また最新動向についてお話をうかがいたいと思います。まず初めに、ヒルティに対してどんなイメージをお持ちか、お聞かせいただけますか。

 

菅原 御社はリヒテンシュタインに拠点があり、そこから欧米に向けて事業展開しておられるそうですね。以前お訪ねしたことがありますが、品質管理がしっかりしていて、日本にはほとんどない装置を用いて品質などの検査が行われていることに驚かされました。御社の技術者と共同研究を行ったこともありますが、技術研究に非常に力を入れておられるという印象でした。
 

藤岡 そう言っていただけると光栄です。それではまず、建物の遮煙・遮炎性能の重要性に関連してお尋ねしますが、日本における建築物の防火措置と安全性について、どのようにお考えですか。

 

菅原 日本の住宅に多い在来木造は、火災が起こるとあっという間に拡大するという構造上の弱点があります。高度経済成長期前後の日本では化粧合板を用いた建築物が増えましたが、化粧合板はいったん火が付くと簡単に燃え広がってしまいます。そこで次に出てきた石膏ボードは、所定の間、火災をくい止める性能があり、今はポピュラーな内装下地材になりました。一方で、依然として住宅は施工が素早く簡単に行えることが重視され、建物の寿命もせいぜい20〜30年とされています。そのため、施工や維持管理を通じて建物内部の遮煙・遮炎の技術を受け継ぎ、成長させていくということに関しては、まだ不十分であるように思います。

 

藤岡 建物の類焼、延焼を防ぐために「防火区画」という考え方がありますが、その性能に対する現状はいかがですか。

 

菅原 日本では古くから障子・ふすまなどの燃えやすい建具が用いていたことから、防火区画がつくりにくい生活文化があります。しかし欧米では、レンガや石造でがっちりと囲った空間が防火区画の役目を果たしているため、防火区画に対する認識は日本より先行していたといえます。日本において防火の役目を果たす間仕切りが重視されるようになったのは、近代に入ってからです。それが発展すると次の段階として、ジョイントや設備配管、つまり継ぎ合わせと配線の部分が意外な弱点になっていることが判明しました。一見しっかりしている建築物でも、これらの隙間から煙やガスが漏れることがあります。「遮煙や遮炎」についてはまだ発展途上なのです。近年、火災につながる大災害が続いたことから、こうした部分の克服に有効な方法はないかと考え始めている段階にあるといえます。

 

藤岡 そうしますと、今後の日本では遮煙・遮炎性能の基準の整備が更に進み、煙や炎拡散のリスクが巧みにコントロールされた建物が続々と誕生する時代が来るかもしれませんね。

 

 

 

菅原進一氏

東京大学名誉教授 東京理科大学名誉教授 日本大学客員教授

地震発生時の火災リスクに備えるために

藤岡 次に防火措置の耐震性・変形追随性についてうかがっていきたいと思います。日本は世界有数の地震国ですが、防火措置の上でも地震が起こることを前提にした対策が行われているのでしょうか。

 

菅原 それは今まさに懸念される問題です。地震によって各種構造の貫通部や壁と天井の取合い部分がどうなるのかなど、分からない点がまだまだ多いのです。それを考慮して、変形追従性があり地震に見舞われても火災拡大危険性の少ない合理的な工法を更に考えていく必要があるでしょう。

 

藤岡 地震による変形が生じても、耐火・防火区画の性能が維持されることは非常に重要だと、われわれも考えております。とくにスプリンクラーのような消火設備が地震で破損し、機能しない場合を想定した火災対策が必要なのではないかと。

 

菅原 1995年の阪神淡路大震災は世界で初めて現代都市を襲った地震ですが、発生時は早朝で人々が活動を始める前でした。だから、火災で煙が充満したビルの中に人が取り残されるといった問題は顕在化しませんでした。震災後にビルの中の貫通部がどうなっていたのか調査もしましたが、煙が漏れていた例が数多くありました。しかしそのことはあまり議論されずに、今日に至っていると思います。

 

藤原 そのような状況では、炎や煙をくい止める防火区画の重要性が増々大きくなると思います。弊社の「ファイヤーストップ」は、アメリカ西海岸のような地震リスクの高い地域において、現地の試験基準により変形追随性や耐震性の検証を行っております。そういった製品を日本で紹介出来れば、災害時の安全安心性向上に更に貢献できるのではないかと考えております。

 

菅原 これから30年以内に首都圏で大地震が起こる確率は非常に高いといわれており、阪神淡路大震災のときに懸念したことが現実になるかもしれないと憂慮しています。そういった意味で、ヒルティさんの先導性には期待しています。

 

藤岡 ありがとうございます。建物の安全性を確保するには、火災を検知して消火するスプリンクラーのような「アクティブ・ファイヤーストップ」と、類焼・延焼を遅らせるような耐火・防火区画、いわゆる「パッシブ・ファイヤーストップ」の両者がうまく補完し合いながら機能して、地震の前後を通して建物の安全を担保し、火災を防止していくことが非常に重要です。そのためにも海外の知見を日本の建設業界と共有し、広めていきたいと考えております。

 

菅原 とくに今後は、煙・ガスの拡散という大きな問題を、適切な区画の設置によって防止していかなくてはなりませんね。

 

藤岡 建物火災の際に、ガスの拡散による一酸化炭素等の中毒で亡くなられる方がたいへん多いのは、われわれも把握しております。

 

菅原 煙や少量でも人間にダメージを与え、避難を妨げる怖さがあります。煙に視界が遮られてすぐそばにあるドアが見えなくなったり、自分の居場所がわからなくなったりします。さらに危険なのが、煙に含まれている有毒ガスです。多いのは一酸化炭素ですが、ほかの有毒ガスでも煙を吸い込んだために意識が混濁し、避難できなくなるという状況が起こりえます。そういった事態を避けるためにも、区画の持つ機能を引き出して、遮煙性を高めていくことが大事だと思います。

 

 

 


日本ヒルティ技術本部 技術本部長 藤岡 健介

 

 

省力化と教育効果を両立させた工法

 

藤岡 近年の建設業界の大きな課題の一つに、「省力化」があります。そこで当社では、区画のケーブル貫通の防火措置工法について、2019年12月に国土交通大臣による新しい大臣認定を取得いたしました。これは従来に比べて容易に施工でき、施工時間が短縮できる、省力化を実現した工法です。「防火プラグ」と「スピードスリーブ」という2つの製品・工法があり、とくにスピードスリーブのほうは、再通線の場合、非常に簡単に通線ができるため、竣工後のメンテナンス性が高いのが特徴です。また成形品なので、目視だけで施工管理や検査を簡便に行う事ができ、建物の完成後の耐火・防火の区画性能の維持管理が容易になったと感じていただけると思います。

 

菅原 この工法には、ヒルティのマネジメントに対する考え方が反映されているように思いました。例えば施工なら、関連するAとBという部門がある場合、AとBが相互に融合するようなコミュニケーションがなければ、きちんとした工事はできません。まさにそこを取り扱ったヒルティの工法は、マネジメントの意味を建設現場に教える役目も果たしてくれるのではないでしょうか。また、こうした施工には費用がかかると思われがちですが、これらの工法は、建物のライフサイクル全体を通したトータルコストで考えても、安く迅速な施工性を有する合理的な工法だといえます。

 

藤岡 建物のライフサイクル全般において安全性を確保し、品質管理を容易にすることがとても大事だと思っていますので、この製品が広く起用され、利用される人々に安心感を得ていただくことを期待しております。

 

菅原 またこの工法であれば、その現場に初めて来た作業者の方も、一定の指導を受けることで、従来と比べてはるかに効率よく、しかも遮炎・遮煙の知識を習得しながら作業を行うことができます。作業にあたる方に品質管理の過程を理解してもらい、面白いと思ってもらえれば、日本の建物は防・耐火上、有利で有効なものとして発展していけるのではないかと思います。

 

藤岡 ありがとうございます。私どもの取り組みによって日本の建物の安全性が向上し、労働力不足などの建設業界の課題解決に寄与することができれば、それにまさることはありません。今後も引き続き安全性向上、省力化、容易な施工性・施工品質管理の面から、日本の建設現場の生産性の向上に取り組んでまいりますので、ご指導の程よろしくお願い申し上げます。

 

菅原 ヒルティ社には世界的な背景がありますので、防・耐火性を高める方策について、材料・設計・施工・維持管理などあらゆる角度から国際的に経験されていることが多いと思います。ご提示のこの工法はそれが集約された、象徴的なものではないでしょうか。これを機会に、日本の耐火・防火区画の安全安心性を更に高め、ぜひ普及に努めていただきたいと思います。

 

藤岡 使命感をもってやっていきたいと思います。本日はありがとうございました。

 

大臣認定取得番号

■認定番号:PS060WL-1092

■認定番号:PS060WL-1087

■認定番号:PS060WL-1088

■認定番号:PS060WL-1093

■認定番号:PS060WL-1089

■認定番号:PS060WL-1090

■認定番号:PS060WL-1094

■認定番号:PS060WL-1091

CFS-SL GAスピードスリーブ

多数のケーブルを通すための成形済み装置で、最適なエアフロ―制御が可能

  • 抜群に容易な施工と施工管理
  • スリーブの開閉だけで再通線が可能
  • 現場での部材加工が不要
  • 再通線時も、部材加工に伴う粉塵発生や硬化したパテの切削作業が不要
  • 高い占積率
  • 対象母材(壁):コンクリート(厚み70㎜以上)、ALC(厚み70㎜以上)、

         中空壁(厚み70㎜以上)、片面乾式壁他

 

製品情報

 

 

CFS-PL ボウカプラグ/FS-ONE MAX 熱膨張性ボウカシーラント

壁面のケーブル用開口部 (暫定的または恒久的) のための、再利用可能な熱膨張性防火ソリューション

  • 簡単な施工
  • 成形品で一定の厚みをもつため、施工管理が容易
  • 優れた遮音性能
  • FS-ONE MAX 熱膨張性ボウカシーラントを隙間に充填する事で気密性能を付加
  • FS-ONE MAX 熱膨張性ボウカシーラントを前面に追加塗布する事で止水性能を付加*

   (*CFS-PL 単体では止水性能はありません)

  • 対象母材:(壁)コンプリート(厚み70㎜以上)、ALC(厚み70㎜以上)、

 中空壁(厚み70㎜以上)、片面乾式壁他

製品情報

 

CFS-F FX ファイヤーストップフォーム

ケーブル用貫丸穴壁開口部の開口径に柔軟に対応できて再通線可能な

ファイヤーストップフォーム

  • 高ケーブル占積率
  • 優れた気密性能、遮音性能
  • 優れた施工性
  • 対象母材:(壁)コンプリート(厚み70㎜以上)、ALC(厚み70㎜以上)、

 中空壁(厚み70㎜以上)、片面乾式壁他

製品情報

取材・執筆 日本ヒルティ 椿 けいすけ 2020年2月